虫入りトルティーヤと塩気がベストマッチした話

 前の記事「昆虫食を買ってみた」の通り幼虫ミックスを買ったものの、味と臭いのクセが強かった。

 凝縮させまくったエビの味と臭いが舌と鼻をついて仕方がない上に、飲み込んだ後も口内に残る臭いが嗅覚を刺激する。

 このままでも食えない事はないが、何かに耐えながら食事するというのは心理的によろしくない。さて何か良い方法はないものかと考えた私は先人の知恵を借りる事にした。

 

ゴミムシダマシのトルティー
 ひも解いたのは『昆虫食文化事典』。世界各地の食文化として昆虫食を研究しておられる三橋淳教授が書かれたものだ。
 この本は、世界各地でどんな昆虫が食べられているのか、その食文化の歴史は、それぞれの昆虫にはどんな栄養成分が含まれているのか、といった情報を記したものである。
本文中には調理法も記載されており、簡便に出来る料理は無いかと探して以下の記述を見つけた。

『昆虫食文化事典』, 三橋淳八坂書房,2012年6月20日

P130 諸外国の昆虫料理

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 動物タンパク質としてチャイロコメノゴミムシダマシ幼虫を添加する試みが行われている。まず幼虫を沸騰している湯に3分浸け、60℃のオーブンで乾燥させて粉末にする。トルティーヤはトウモロコシ粉14グラムに1グラムの割合で幼虫粉末を加えて作る。できたトルティーヤは幼虫を加えないものに比べてやや黒ずんでいたが、タンパク質含有量は2%、脂肪含有量は1%多くなっており、味も舌触りも良かった(Aguilar-Miranda et al. 2002)。

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 これなら簡単だろう。
 という訳でいざ実践。

 

実践、幼虫ミックストルティー
 正確に言うとトウモロコシの粉は使わないので「トルティーヤ」ではないのだが、あえてそのまま呼称する。
 トウモロコシの代わりに小麦粉を使って製作開始。
 TAKEOの店員さん曰く、『幼虫ミックス』は4種類の幼虫を乾燥させ僅かばかりに塩をふったものだ。
 故にミールワームをはじめとする幼虫たちは乾燥済みなので、自分でやる事はすり鉢を使って粉にするだけ。後は用意した小麦粉と所定の割合で混ぜる。

 

小麦粉(白色)とすりつぶした幼虫ミックス(赤茶色)

小麦粉(白色)とすりつぶした幼虫ミックス(赤茶色)

 そして水を混ぜて捏ね、オリーブオイルを引いたフライパンで焼く。平べったくして生地の中まで火が通るほど焼いたら出来上がり。

 

焼き上がった虫入トルティーヤ

焼き上がった虫入トルティー

 出来上がったトルティーヤの見た目は、フライ返しで切り込みを入れた事と、生地の焼き色に昆虫粉のこげ茶色が合わさって事で、遠目にはポークフライとかに見えなくもない。

 まずは何もつけずに食べてみる。
 小麦粉でかさ増しした事で、しつこいと感じたエビの味と臭いは薄まり丁度よい塩梅になっている。……なんだろうか。桜エビを入れ込んだ煎餅を食べている様な気分だ。
 パンにピーナッツやマーガリン、ハチミツをつけて食べる事が多い私なので、当初は甘く味付けしようかと思ったが、おそらくこれは塩気の方が合う。

 そこで試しに塩をふりかけると、程よい塩気の後に焼けた生地の香ばしい匂いと味がした。噛んでいく内に、口の中でエビと塩の味が混ざってお互いの味を引き立て合う。
 次は醤油に浸してみた。こちらも中々マッチしている。
 見た目はフライで味はエビ、使っているのは虫という簡便な料理ができた。小腹が減った時には丁度よいオヤツになりそうである。

 

何も虫の姿まんまでなくて良い
 今回なんちゃってトルティーヤを作って食べた事で一つの考えに行きついた。虫を食うからといって、何も原形を留めたままでなくて良いという事だ。

 自分の中で「昆虫食=虫の姿のまま食べる」という図式が出来てしまっていたのだが、よく考えてみれば獣肉を食うときは加工されているケースが殆どであり、牛や豚の丸焼きにかぶりつくというのは中々ない(いや日常的にこういう食べ方をしている人もいるかもしれんが)。

 同じ事は昆虫にも言える。食べやすい形に加工したって良い。何もそのまんまの姿で食わなくてはならないという決まりもない。粉体にして食品に練り込めば虫を食う事へのハードルが下がると思う。
 TAKEOさんの所にあったクリケットパスタ(コオロギパスタ)の例もあるし、思いのほか軽食としてアリな感じに仕上がったのは良かった。

 『幼虫ミックス』や『クリケットパスタ』を上野まで買いに行くのが大変だという方は、TAKEOさん通販もやっておられるので、ホームページやAMAZONから購入されたし。