楽しみにしていた『シャザム!』が想像以上に面白かった話

スーパーマンを生み出した事で知られるDCコミックス。その豊富な作品郡はワーナーブラザーズ配給の元で沢山の実写映画化されてきた。
 そしてこの度公開されたのが『シャザム!』である。
 この記事は「洋画も見るし、MARVELの様なヒーロー映画も見る。ただ筋金入りのファンではない」という筆者に近い性質の方に向けたものである。『シャザム!』の名前を見た・聞いた事はあるんだけれど「是が非でも見に行きたいかと言われると……うーん……」という様な方が観賞するきっかけになればと思い書いた。
 なお、この記事を書いている時点で筆者は字幕の方を見ている。時間の都合により吹き替えはまだだ(見に行く予定はある)。

 

あらすじ
 ビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)は幼い頃に離れ離れになった母親を探すため、里親の元を抜け出しては捜索し、過激な行動で警察の厄介になることもある14歳の少年。「本当の家族じゃないから」と里親たちに心を開かない彼を次に引き取ったのは、フレディ・フリーマン(ジャック・ディラン・グレイザー)をはじめとする5人の子供たちと共に暮らすバスケス夫妻。
 新しい家族にも頑な態度を崩さないビリーであったが、母親がいないことを馬鹿にするいじめっ子たちに怒り、彼らから暴力を受けていたフレディを救う。狙いをフレディから自分に変えたブライヤー兄弟を見事にまいて地下鉄に飛び乗ったビリーは、そこで不思議な現象に見舞われた。
 ビリーの中に正しい心を見出した魔術師(ジャイモン・フンスー)が彼を召喚したのだ。戸惑うビリーに勇者「シャザム」の力を与え、老いた自分の後継者として世界を守るよう伝えると魔術師は消滅した。
 呪文を唱える事で、筋骨隆々な大人の体を持つヒーロー・シャザム(ザッカリー・リーヴァイ)へと変身できるようになったビリーはヒーローオタクであるフレディの助力を得ながら、悪いやつを懲らしめ、スーパーパワーのテスト動画をネットに上げて、外見が大人なのを良いことにアレコレしてと大はしゃぎ。
 しかし、邪悪な”七つの大罪”を取り込んだDr.シヴァナ(マーク・ストロング)がシャザムの力を狙って襲撃してきた。あわやという所で元の姿に戻りビリーは難を逃れたものの、シャザムとの繋がりに気づいたシヴァナにフレディが捕らえられてしまう。果たしてビリーは「家族」を救い、本物の勇者になれるのか……!?

 

個人的概説
 大人の姿をした超人に変身できるようになった少年が成長し、家族という存在と向き合っていくお話。
 あちこちで言及されている事だが、DC映画というと『ダークナイト』や『マン・オブ・スティール』などの印象から、ダークでハードなシリーズというイメージが強い方もいるだろう(自分もそうだった)。
 そのイメージを払拭するためなのか、純粋に作風の明るさを強調したいからなのか、日本国内のCMや宣伝ビラでは「悪ノリ!」という言葉が踊り、かなり砕けた文章で作品紹介がなされている。
 故に『シャザム!』が型破りで過激なギャグ映画と思えてきそうだが、その路線で期待していると肩透かしをくらうだろう。「家族探し」がテーマの一つと言える映画の内容そのものは結構マジメだ。
 特に本作の悪役であるDr.シヴァナが登場する場面の大半はシリアスであり、要所でショッキングなシーンがある。ぶっちゃけると劇中で何度か人が死ぬ。シヴァナが人を襲うシーンは、マーク・ストロング氏と襲われる役の皆さんの熱演により結構怖い。

 ホラー要素も散りばめられた本作だが、それでも私は胸を張ってファミリー映画だと言う。
 作風が明るいこと自体は間違いではないし、何より要所で挿入されるコメディ要素はとても面白い。あえてMARVEL映画で例えるなら『デッドプール』程とんがってはおらず、『アントマン』や『マイティ・ソー バトルロイヤル(原題:Thor Ragnarok)』に近い笑いだ。
 物語前半のコンビニ強盗戦のみならず、Dr.シヴァナとの戦いにおいてもシャザムのコメディリリーフぶりは健在である。ヒーローなんだから真面目にやれという声が聞こえないことも無いが、こういったキャラクター描写がシャザムという映画の陽性を強めている。
 特に変身した後の姿シャザムが見せる言動に注目してほしい。見ているとまるでアッシャー・エンジェル氏がザッカリー・リーヴァイ氏のキグルミを着ているような錯覚をしてしまう。別人が演じているのに中身が同じ様な気がしてくるのだ。

 そしてエンジェル氏とリーヴァイ氏が表現するビリーの成長がこの作品最大の魅力で主軸だ。
 バスケス夫妻に引き取られた直後のビリーは固く心を閉ざしている。そんな彼が実の母親探しと、フレディとの対立、シヴァナとの戦いを通じてどんどん「家族の一員」として「ヒーロー」として成長していく。
 フレディたちのサポートを受けながら対決に臨むビリーと、完全なる悪役・倒すべき敵として力を入れて描かれたDr.シヴァナの違いにも注目してほしい。両者の置かれた立場と彼らが取る行動を比較してみると、2人が善と悪以外の面でも対照的であり、魔術師が見出したビリーの可能性とその成長ぶりが良くわかる。
 個人的には映画後半で義兄妹のダーラに向けた言葉は、ビリーが「家族の一員」として「ヒーロー」として前進した事を象徴している様に感じた。サラッと出てきたあのセリフだが、ああいうのは大好きだ。

 本作を実際に鑑賞した結果、世界的にヒットしている理由がよく解った*1
 もしよければ『シャザム!』を是非とも見に行ってほしい。これは私見だが、『グーニーズ』が好きな人はこの映画も好きになるかも知れない。